草日誌

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2025年11月14日

ソラノマド|高山なおみ 
ぼくらは森へかえることにした

 

| ぼくらは森へかえることにした |
 
せなかの くぼみに
折りたたんだ羽を
きみに みつけられたから

ぼくも 
きみの 足のあいだに
小さなとっきを
みつけてしまったから

ぼくらは森へかえることにした

そのうち きみは 
四つんばいで
歩きはじめるだろう
ぼくだって ほら
ほんとは はって歩くほうが
やわらかくうごける

きみの しっぽが
すこしのびて
夜になると ぼうっと 光る
そこまできているのなら
もう いいんじゃないかと思って

まどをあけて ねていると 
雨が みち みち 
泡が ふる ふる 
ひい  
風がなる
でも わたし 
雨なのか 
泡なのか 
風なのか 
ほんとは さだかでないのです
耳のうしろが 
ふるえているのか
鼻のおくの ひだが
わらっているのか

なんて きみがいうから
そこまできているのなら
もう いいんじゃないかと思って

やせいが うつって きているんだよ
森のいきものたちは 
みんな そうしてる
みえないものを とりこみながら
いきている
きみの かたよりの つよさは
みえないものの がんじょうさに
まもられる
だれでもない 
何でもないものに まざれる

だからもう 森へかえろう
ほら みて
紅葉あきのまんなかだ

 
 
〈 了 〉

文・写真 高山なおみ

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高山なおみさんの本 → 『毎日のことこと』

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