草日誌

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記事一覧

松井至|人に潜る

人に潜る 第8話
田んぼに還る|西会津 ②

2024年07月20日

【 集落のヒト 】 2022年のある日、レンタカーの中で途方に暮れていた。 「もうこれ以上は撮れない」そう思って現場を離れたのだが、運転して東京に帰る気力がなかった。撮影は頓挫した。 フロントドアを開けて、最上川の匂いと…

人に潜る 第8話
田んぼに還る|西会津 ①

2024年07月06日

【 焚き火の上の動く画 】 ある夜を境に映像が流布する以前の世界を想像するようになった。 2017年、ウガンダ北部をジープで走っていた。 郊外の集落まで、少年兵だった青年に会いに通う。長く続いた内戦で地獄を通過した子ども…

人に潜る 第7話
「いのちの被膜」をめぐる対話
〈後編〉

2024年07月05日

2023年夏、京都の誉こん田だ屋や源げん兵衛べえにて。 短編ドキュメンタリー『いのちの被膜』は山やま口ぐち源げん兵衛べえさんからの依頼を受けて松井至が制作した作品である。そこで語られた衣ころもをめぐる思考を深めるため、思…

人に潜る 第7話
「いのちの被膜」をめぐる対話
〈中編〉

2024年05月18日

2023年夏、京都の誉こん田だ屋や源げん兵衛べえにて。 短編ドキュメンタリー『いのちの被膜』は山やま口ぐち源げん兵衛べえさんからの依頼を受けて松井至が制作した作品である。そこで語られた衣ころもをめぐる思考を深めるため、思…

人に潜る 第7話
「いのちの被膜」をめぐる対話
〈前編〉 

2024年05月04日

2023年夏、京都の誉こん田だ屋や源げん兵衛べえにて。 短編ドキュメンタリー『いのちの被膜』は山やま口ぐち源げん兵衛べえさんからの依頼を受けて松井至が制作した作品である。そこで語られた衣ころもをめぐる思考を深めるため、思…

人に潜る 第6話
握手

2023年12月02日

十代の終わり頃だった。 ひとり暮らしのアパートで宅急便の再配達を頼もうとダイヤルを押した携帯から宅配員の声が聞こえたとき、自分の名前をすっかり忘れていることに気がついた。 お名前は? そう二度三度くりかえすこととなった宅…

人に潜る 第5話
いのちの被膜|京都 ③+映像

2023年09月16日

      どこにでもある⽇常のありふれた場⾯に、長く悩まされてきた問いが溶解した⽇のことを思い出す。 娘のスイミングスクールに付き添ったときだった。 ⾒ていてね そう⾔われて蒸し暑い観覧席からプールサイドを⾒おろすと、…

人に潜る 第5話
いのちの被膜|京都 ②

2023年09月02日

      夏の陽射しの強い⽇だった。 京都・室町にある帯屋の⽼舗、誉⽥屋源兵衛の奥座敷に屈み込んで⼤量の古い⼦ども服を畳に並べていた。広い屋敷のどこかの軒下から⾵鈴の⾳が聞こえてきて、中庭にカメラを向けると⾳もなく樹々…

人に潜る 第5話
いのちの被膜|京都 ①

2023年08月19日

      ⽇頃わずらわしく思っていたWEB広告が、なぜか⽬の⽚隅に残って履歴をひとつ戻る。⾒覚えのあるものがヤフオクで売りに出されていた。それはどの家にもあり、暗黙の内に〈売ってはいけない〉という了解がなされたはずのも…