記事一覧
【 荒ぶる故郷 】 その日は猛暑日で日向に立つと危険を感じた。 奥川の川沿いの高台にある坂井家にお伺いすると長男の瑛えい心とくん(7)が冷蔵庫からお茶を出してきてくれた。話しかけてみると、お父さんが働く姿を「カッコいい」…
【 田んぼのある風景 】 その日は予定がなかったので山奥に車を走らせた。 奥川の人から話を聞いていたが、その集落は他とは全く雰囲気が違った。まず田んぼがなかった。家の造りが簡素で建具やトタンも古く、昭和から変わっていない…
【 今がとっても幸せ 】 思わぬところで思わぬ声と出会い、はじめて自分がなにを聴きたかったのかわかる。 なして俺んとこさ、来ねえのよ! いつ来んだか? 明日か? 福島屋にいるから、いつでも来てください。 こんなふうに誘わ…
【 生きている者たち 】 撮影をはじめた日は、お盆の墓参りだった。 炎天下の朝に老人がひとり国道を歩いてきて小径に入る。挨拶をして話を聞く。彼が自分の家の墓に手を合わせてから線香をあげ、それからいくつもの墓石の前に次々と…
【 映像の地産地消 】 あいかわらず葛藤してますね。 事の顛末を話すと佐藤恒平(39)はそう言って笑った。 区長は最近、移住者もいなくなってたまたま負けが込んでいただけですよ。至さんが全然仕事うまくいってなくて、もっと落…
【 集落のヒト 】 2022年のある日、レンタカーの中で途方に暮れていた。 「もうこれ以上は撮れない」そう思って現場を離れたのだが、運転して東京に帰る気力がなかった。撮影は頓挫した。 フロントドアを開けて、最上川の匂いと…
【 焚き火の上の動く画 】 ある夜を境に映像が流布する以前の世界を想像するようになった。 2017年、ウガンダ北部をジープで走っていた。 郊外の集落まで、少年兵だった青年に会いに通う。長く続いた内戦で地獄を通過した子ども…
2023年夏、京都の誉こん田だ屋や源げん兵衛べえにて。 短編ドキュメンタリー『いのちの被膜』は山やま口ぐち源げん兵衛べえさんからの依頼を受けて松井至が制作した作品である。そこで語られた衣ころもをめぐる思考を深めるため、思…
2023年夏、京都の誉こん田だ屋や源げん兵衛べえにて。 短編ドキュメンタリー『いのちの被膜』は山やま口ぐち源げん兵衛べえさんからの依頼を受けて松井至が制作した作品である。そこで語られた衣ころもをめぐる思考を深めるため、思…