2012年10月20日
永井宏さんのワークショップに集っていた19人へのインタビューをまとめた本です。
永井さんはワークショップでどんなことをしていたのか。その様子が再現されているわけではありませんが、永井さんがどういうふうに人と接していたのかは、この本を読むとよくわかります。
無理させず、でも身の丈よりも数センチ高いところまで手を伸ばしながら、何かをつかんでいくのを見ている。その場所に一緒にいる。
永井さんはほんとうに面倒見がよかったのだと、いまさらながら思います。
教壇の上から教えたり伝えたりするのではなく、ひとりひとりの場所にいて、何ごとかをおしゃべりしている。横の人にはちんぷんかんぷんでも、いわれた当人は腑に落ちたり、かちん!ときたり、とにかくこころの柔らかいところに触れるように、時間を過ごしていく。
学校でもなく、師弟でもなく、その場にともにいる。
何かと口うるさくて、機嫌がいいと駄洒落や下ネタばっかり口にする。一緒にへんな歌を唄わせたり、急に無理難題を持ち出したり。それでも人が集まっていたのは、永井さんの広くて膨大な知識と、それを惜しみなく分けてくれることのよろこびと、最初は恥ずかしいのに一緒に歌っていると不思議と楽しくなってくるおかしな歌や、永井さんのちょっと隙間の空いた前歯や、ケンカしても(本気でケンカをする人でした)別れたあとにすぐにまた会いたくなるような懐かしさや……永井さんのワークショップは、きっとそういう愛の場所だったのだろうと思います。
「葉山のワークショップは、2004年の3月にスタートしました。名称は「assemble le souffle」(アセンブル・ル・スフル=風を集めて)。「一人ひとりが起こす風は小さくても、集まると大きな風になる」という意味が込められています。なんだか、ささやかなわたしたちにぴったりのネーミングです。」(古川久美子「まえがき」より)
永井さんのワークショップの成果は、この本を見れば明らかです。
こうして集まった小さな風は、いまも爽やかにささやかに清かな風として吹きつづけています。
まとめられた菜文さんと古川さんに、感謝の気持ちと大きな拍手を。まとめてくださって、ありがとうございました。
『雲が生まれた場所で』
村椿菜文・古川久美子/assemble le souffle