草日誌

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2012年5月4日

Carte Collier

撮影をはじめてから約半年を経て、前川秀樹さんの『Carte Collier カルト・コリエ』がようやく完成、『museum as it is』での展示も4月27日からはじまりました。
このプロジェクトは、まだ夏の暑さのただ中にあった昨年9月、前川さんからの電話ではじまりました。
「坂田さんがやっている『as it is』で来年の春から展示をすることになったんだ。展示とはいっても作品展じゃなくってさ、うちにあるいろんなガラクタやら骨やらを展示するんだけど。でね、展示したものを記録する本か何かを作れないかなあ」
そんなお話でした。
うかがっている間から、頭の中ではめまぐるしく想像が動きはじめます。土浦のお宅にはこれまで何度もお邪魔していて、前川さんがおっしゃる「ガラクタやら骨やら」がすぐに目に浮かんだからでした。
たしかに作品集とするには無理がありますが、それにしても魅力的なものたちです。前川さんはいわゆるコレクターではありません。だから「ガラクタやら」という言葉が出てくるのですが、いつの間にか手元に集まってきているそれらのものになみなみならぬ愛着を持っているのも知っています。それは「ちょと拾ってきた」という言い方では収まらない。中には長さ数メートルもある船の舵や、フランスから運んできた鉄の扉などもあります。これらを前川さんが集めてくるエネルギーは何なのでしょうか。
逆に「モノが集まってくる」という言い方もあります。
人が集まる場所、情報が集まる場所、おいしいものが集まる場所があるように、モノにもそういう場所があるのでしょう。ものが居着く場所とそうでない場所。モノたちにとって居心地のいい場所があるとしたら、前川さんのお宅は間違いなくそういう場所です。
今回のas it is での展示は、作品展でもコレクション展でもありません。モノに惹かれる人と、人に惹かれるモノたちの、相思相愛の空間? それも違う気がします。そんなロマンティックなストーリーすらなく、ただある種の磁場に吹き溜まってしまったものたち。それらが場所を変えて、いっとき小さな美術館に姿を見せている。めぐる季節ではないけれど、まるで自然現象の一部のようにさえ思えてしまうから不思議です。
モノたちがさんざめくささやかなお祝いの空間をぜひ体験ください。

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