草日誌

草日誌

2012年3月29日

桜のころ

今年は春が遅く、なかなか暖かくなりません。毎年春の天候の不安定さには苦労させられますが、今年ほど暖かくなるのを待ち望む年はないように思います。最近になってようやく、毎日の天気予報で桜の開花予報が伝えられるようになりました。

昨年の春には、編集を担当させていただいた、ナカムラユキさんの『京都さくら探訪』(文藝春秋)が発売になりました。

ユキさんは京都在住のイラストレーターです。桜の専門家でもプロのカメラマンでもない、でもわたしが知るかぎり「日本一さくらを愛する名カメラマン」です。たくさんの桜の花をそれぞれ違う表情でカメラに納めています。そのすべてが愛情あふれる写真なのです。
そして、この本は京都の桜名所80か所を写真と文章で案内しているのですが、なんと1シーズンですべての写真を撮影しています。桜は品種や地域によって咲き始める時期がまちまちなので、そのいちばんいい時期を狙って、観光客がやってくる前の早朝に自宅を出発、自転車を走らせます。桜の時期の京都は交通渋滞で車もバスものろのろ運転。自転車がいちばん確実な足なのだそうです。

春になるとどこに行っても桜が咲いていて、それを眺める人々はみなうれしそうで、日本人にとって桜の花がいかに特別かということを実感します。ふと入り込んだ道で満開の桜に出会い、びっくりした経験がある方も多いのではないでしょうか。

「京都さくら探訪」では、「窓越しに見る(京都府庁旧本館)」、「自転車で走りながら見る(鴨川)」、「包まれて見る(京都御苑)」など、長く京都に暮らし、毎年毎年さくらを見続けてきたユキさんだからこその独自の目線で、桜の楽しみ方を提案しています。
京都にお花見にいらっしゃる予定があれば、ぜひ、同じ見方を試してみてください。新しい発見があるかもしれません。
もちろん、花より団子で、桜案内の合間にあるおいしい寄り道情報も役立つと思います。

コラムにある、「マイ桜」を決めることもおすすめです。気になる桜の木を「自分の桜」として親しみ、毎年その花が満開になるのを楽しみにする。それだけで今までよりも春が楽しみになるかもしれません。
我が家の窓からも1本の桜の木が見えます。はす向かいのお家の庭なので、お隣の屋根越しに見る感じなのですが、毎年見事に咲いてくれて、仕事の合間に「ほーっ」と眺めています。

昨年本が出版されて、京都、東京、名古屋と出版記念イベントを予定していました。そして京都のイベントが無事に終わり、さて東京、というときにあの大地震が起きました。なんとか開催したかったものの断念。不安な毎日のなか、それでも桜はいつもにも増して美しく咲き、みんなで静かに眺めたことを思い出します。
今年の桜はどんな気持ちで見上げることになるでしょうか。いろんなことがありすぎた一年。そしてこれからも続く遠い道のり。昨年にも増して、今年の桜は特別なものになりそうです。

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