草日誌

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2019年10月20日

第8回 映画とごはんの会
『薩摩の紙漉』

信陽堂「映画とごはんの会」11月のプログラムが決まりました。
第8回の上映作品は『薩摩の紙漉』です。

鹿児島県姶良郡蒲生町に伝わる紙漉きの技術は奈良時代まで遡り、江戸時代は藩の御用紙として郷士たちによって作られていました。最盛期には500軒もの家で行われていたものが、撮影当時1軒だけに減っていた伝統的な紙漉。所作や質への姿勢に薩摩郷士の気質がうかがえます。薩摩の豊かな風土を背景に、材料の収穫から仕上げまでを記録した約30年前の映像です。

日時 11月9日(土)
会場 信陽堂アトリエ(文京区千駄木3-51-10-1F)

【昼の部】
14時上映開始(開場13時30分)15時30分終了
参加費 1500円(税別、お茶とお菓子付き)
定員 10名
(昼の部はゲストスピーカーおりません。上映のあとはお茶とお菓子でおしゃべりしましょう)

【夜の部】
19時上映開始(開場は18時30分)22時終了
参加費 3000円(税別、ワンドリンクと軽食付き)
定員 → 予約満席となりました(10月25日) 

【受付】← こちらから。
「お問い合わせ内容」に「上映会参加希望」「昼の部」または「夜の部」、当日連絡が取れる電話番号、複数でお申し込みの場合は人数もご記入ください。

「映画とごはんの会」は……
作品の上映と、お酒とおつまみをご用意した会です。

1)自己紹介は必要ありません
2)感想も求めません
とはいえ、映画を観たあとには浮かび上がるいろいろな思い、疑問を肴におしゃべりを楽しむ時間です。
ゲストに、民映研の創立メンバーでこの映画の撮影も担当した伊藤碩男カメラマンと箒有寛さんをお迎えします。
湧きあがる疑問には、博覧強記の伊藤さんが驚異の記憶力をもって答えてくださるはずです。

おつまみとごはんは「たまや」が担当します。

『薩摩の紙漉』
1990年/30分/鹿児島県教育委員会委嘱
鹿児島県姶良郡蒲生町上久徳

【作品解説】
薩摩の紙漉きの歴史は奈良時代に遡る。江戸時代には藩の御用紙として奨励され、最盛期にほ蒲生だけでも500軒余が紙を漉いていたが、現在は蒲生町の野村家と鶴田町の野元家のみがその技術を伝えている。これは野村正二、マツ子夫妻の、原料のカジ栽培から紙漉き、製品の仕上げまでの全工程の技術を記録したものである。

1月16日、水神まつり。紙漉き場の井戸に奉られる水神に、一年の紙漉きの無事を祈る。このころは薩摩の紙の原料、カジの木の収穫の季節でもある。刈り取ったカジは、皮を剥ぎやすくするために蒸す。そして近所の人たらも手伝って皮剥ぎ。それから3日ほど天日で乾かす。次にカジ煮。表皮を柔らかくし、アクを出すために苛性ソーダ液で煮る。さらに水に晒してアクをぬく。川に石を並べて堰にしたエゴとよぶ晒し場での昔風な晒し方も記録した。カジのゴミやキズを取り除くキズツミ。そして叩解(こうかい)。カジを打ち、繊維をほぐす。繊維をずたずたに切らないように水平に打つ。自然の繊維の長さを生かすのが日本の紙漉きの特徴である。叩解されたカジをカミソと呼ぶ。

カミソができたら紙漉ぎである。今回は障子紙を漉いた。水をはった漉槽(すきぶね)にカミソを入れよく撹拌し、ネリとよばれる粘り気の強い液を入れる。ネリはトロロアオイの根やノリウツギの皮から取る。ネリは、日本で発達した流し漉きになくてはならないものである。

野村さんの漉き方の特徴は、漉き桁を横、縦、横の順に動かして、それぞれの方向に織維の層を作り、三層にすることである。伝統的技法に野村さん独自の工夫が加わって、丈夫な薩摩紙が漉き上がる。
漉いた紙はしめ木にかけ、静かに水分を絞り出してから乾燥させる。
現在は蒸気で温めた鉄板を使うが、以前は板に貼り天日で乾かした。第二次世界大戦後の桜島の噴火がその転機であった。最後に紙の端を切りそろえ、障子紙の寸法に切ってできあがる。(民映研作品総覧冊子より)
©民族文化映像研究所

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永井宏さんがまいた種
~Harvest of 90s culture~

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