草日誌

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2019年9月20日

永井宏さんの散文アンソロジー
『サンライト』
夏葉社より発売

敬愛する永井宏さんが残されたたくさんの散文から26篇を編んだアンソロジー『サンライト』が夏葉社より発売になります。

永井さんは、美術作家として活発に作品を発表してきた方ですが、同時にたくさんの詩や文章も残しました。
神奈川の海辺の町で暮らしながら作品を作り続け、また自身で「サンライト・ギャラリー」を運営し、「誰にでも表現はできる」「僕たちの暮らしそのものがひとつの表現になるんだ」といいながら、たくさんの人に表現することを勧め、背中を押し、励まし続けた人でもありました。
ギャラリーを閉じたあとは各地でワークショップを開催し、小さなブックレーベルを立ち上げ、出版も手がけました。早くからポエトリーリーディングを主催し、自作の歌も歌いました。ワークショップからはたくさんの表現者が生まれ、2000年代になって花開いた「暮らし系」「生活系」のメディアの担い手たちの多くはそんな永井さんの活動に直接、間接の影響を少なからず受けていました。2003年に僕がはじめたアノニマ・スタジオはまさにそうでした。
今回出版された『サンライト』は、永井さんの残した八冊の本から二六の散文を集めて編んだものです。少年時代の永井さんが過ごした東京、雑誌編集部にいたころに吸収した映画や音楽、喫茶店の文化。メディアの世界から距離を置き、海辺の町で身近な暮らしに視線を向けた表現を紡ぎ出すまで。永井さんが提唱した「ネオ・フォークロア」という考え方への道筋がぼんやりと浮かんでくるような構成を目指しました。

発売を記念して、荻窪の本屋Titleさんで、作品展「サンライト 永井宏さんが残したもの」が開催中(2019年9月21日〜10月7日)
また26日には夏葉社の島田潤一郎さんとのトーク「愉快と永遠とロマンティック」もおこなわれます。

編集の過程で永井さんの奥さまを訪ねた折、たくさんの絵やオブジェを見せていただきました。初めて永井さんの作品を目の当たりにした夏葉社の島田さんもデザインを担当いただいた櫻井久さんとともに静かに興奮して「美術の作品集がないなんて、もったいない」と盛り上がり、いつか永井さんの美術作品も紹介したいと思いはじめていました。
Titleの辻山さんからこの展示のお話をいただいたのは、その直後のこと。辻山さんはご著書『ことばの生まれる景色』の中でも永井さんの『夏の仕事』を取り上げてくださっており、作家としての魅力は以前からよくご存知だったのです。今回は永井さんの平面作品、オブジェ、永井さんの机の周辺に貼ってあったメモ、読まれていた本、作られた本、『サンライト』には収録されなかった短い文章も見ていただきます。永井さんの残した眼差しと言葉に触れてください。
この展示は店主の辻山さん、奥さまの南里恵子さん、ワークショップのメンバーで古書ウサギノフクシュウ(鎌倉)を営まれていた小栗誠史さん、古川久美子さん、アンソロジー『サンライト』を企画された夏葉社の島田さん、その他たくさんのみなさんのご協力のもとに実現しました。

26日のトークではワークショップのメンバーでもあり、永井さん、イシカワアユミさんと〈象の音楽〉というユニットで活動もしていた詩人の村椿菜文さんをゲストに迎え、永井さんの詩、菜文さんの詩の朗読もお願いすることになっています。

いまだに永井さんの発する磁力が私たちを引きつけてやみません。

発行 夏葉社
編集 丹治史彦 信陽堂編集室
装幀 櫻井久
カバー撮影 白石和弘
協力 南里恵子、藤原康二   

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写真:大社優子

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