記事一覧
【 8 血の肉の塊 】 15時の送迎の時間が過ぎて誰一人いなくなり静まり返ったアトリエの窓から夕陽が射すと、光の中で描きかけの絵やなにかの形になろうとしている途中の粘土が人目を盗んで動き出そうとしている予感がした。 その…
【 5 跳躍 】 アトリエのある倉庫の入口に立つたびに暗闇からこちらに向かって走ってきて、ものすごい脚力で飛び跳ねる男を見る。頭を振り、手を叩き、単語を叫ぶ。激しい風が吹き過ぎるように赤井俊太さん(25)とすれ違う。忽然…
【 3 雲をつかむ 】 うわー……どこ見て…… 松井さんを見て話してる感じでいいんですか? 茶色い天然パーマの頭髪にTシャツとデニムの出立ちの男が照れくさそうに座る。 背景の壁には色鮮やかな絵が数枚、机には作りかけの立体…
あなたはコーダのことをまったくわかっていない モスクワで行われたろう者の国際映画祭で観客の一人からこう言われた。『私だけ聴こえる』を上映した直後、劇場を歩いていたら50代後半くらいの男性が強張った顔でこちらを睨にらみつけ…
2016年、アシュリーと共にSNSでアメリカのコーダ・コミュニティーにアンケートを拡散し、回答してくれた子たちに連絡をとっていった。ショッピングモールの買い物をした帰りのハイテンションな女の子とスカイプが繋がったとき、彼…
柳亭市若さんの勉強会、16回目の開催です。 小人数の小さな会です。 お待ちしております。 珍しく日曜日にやります。 ネタ下ろしは二本やりたいですが、 ひとまずひとつは下記に…… よろしくお願いいたします。 ネタ出し「半分…
【 荒ぶる故郷 】 その日は猛暑日で日向に立つと危険を感じた。 奥川の川沿いの高台にある坂井家にお伺いすると長男の瑛えい心とくん(7)が冷蔵庫からお茶を出してきてくれた。話しかけてみると、お父さんが働く姿を「カッコいい」…
【 田んぼのある風景 】 その日は撮影がなかったので、山奥に車を走らせた。 奥川の人たちから話は聞いていたが、山道を30分ほど走ってようやく行き着くその集落は他所とは雰囲気がまるで違った。まず田んぼがなかった。家の造りも…
【 今がとっても幸せ 】 思わぬところで思わぬ声と出会い、はじめて自分がなにを聴きたかったのかわかる。 なして俺んとこさ、来ねえのよ! いつ来んだか? 明日か? 福島屋にいるから、いつでも来てください。 こんなふうに誘わ…