草日誌

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2012年10月6日

永井宏さんのこと

僕らは恋をして生きることを学んだのだから
君もまた恋をして生きることから逃げないで欲しいと思う
全てが愉快なわけじゃないが、季節のような繰り返しの中で
反省したり喜んだり悲しんだりしながら新しい未来を探したらどうだろう
きっといずれは上手くいくはずだと信じることが恋することの基本なのだから
何も怖れることなどない時間を勇気を出して一緒に過ごしていきたいと思う
/永井宏「どうして彼女は恋することをやめてしまったのか」より

毎朝、永井宏さんの言葉をツイートしています。
手元にある数冊の本に適当に手を伸ばし、適当に開いたページにあった言葉を書き写す。
昨年4月に永井さんが亡くなったあと、6月15日からほぼ一日も欠かさず続けています。
書き写すことで永井さんが考えていたこと、感じていた世界にもう一度触れることができるだろうか。そんなことを考えてのことでした。小さなことにはちがいありませんが、毎朝言葉を書き写すことで、ひとりでも多くの人に永井宏という人がいたことを知ってもらえるのではないか、そんな思いもありました。僕なりに写経しているような気分もありました。

今朝の言葉を書き写しながら「一度口説かれてみたかったなあ」と思いました。
あ、いえ、そういう意味ではありません。
永井さんはそういう時ここに書き写しているより何倍も素敵なことを口にしていたに違いなく、そんな言葉に接していた女の子たちは幸せだなあ、と思ったのでした。
永井さんのあの励ましの言葉たち。
「何も怖れることなどない時間を勇気を出して一緒に過ごしていきたいと思う」
こんなに愛に満ちた言葉を自分のためだけに聞いたことがある人は幸せですね。
永井さんは「恋をすることを励ましつづけた」人でした。
恋に憧れるのではなくて、恋をすればいいよ。
自分たち一人一人がそういう言葉を大切にする日々を過ごせば、世界はずっと素敵だよ。
世界を見るレンズの磨き方は人それぞれです。
恋をすること、恋をし続けることはそのひとつの方法です。
誰にでも、今すぐにでもできる、ひとつの方法です。
さあ、みんな恋をしよう。
永井さんはそう教えてくれているんですね。

永井さんがはじめた雑誌「ボタンとリボン vol.5」で、
永井さんの文章のセレクトを担当しました。
綴じ込み付録になっています。
よろしかったら手に取ってみて下さい。

http://windchimebooks.com/wc_book/2012/08/buttan-and-bows-vol5.html#more

(付録)
ちなみに、2011年6月15日、最初に抜き出したのは、次の一節でした。

出掛けようとしてシャツを着たらボタンがポツンと取れてしまった。そんなとき、すぐに付けるか、そのままにするか、別のシャツを着ようか悩む。でも、せっかく決めた今日の気分を壊したくないから、すぐに針と糸を出すことにしている。
/永井宏『夏の仕事』より 

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