2011年11月2日
8月半ばからはじまったロルフィングのセッション、
今回がいよいよ最終回です。
まず、「鼻は、どうしましょう? 直接はまだアプローチしていないけれど。どうしてもしないといけない、というものでもありませんが」
と聞かれる。
間髪いれず
「お願いします」
と答える。
呼吸器と鼻は、自分のなかで大きなテーマだから、まさかそのままスルーはできません。
以前(7回目のセッション)、口と鼻へのアプローチの回にも、ちょうど鼻風邪を引きはじめていて、口で終わりで鼻までは至らなかった。
という訳で、鼻。
両膝を立てて、仰向けに。
軽く枕を当てる。
その後頭部に指を当てて、広がりを感じるように、と言われる。
喉の奥から後頭部にかけて、ずーんと重さを感じる。
と、骨盤に動きの気配。
「骨盤が動き出しそうです」
そう伝えると
「では、動きはじめる前に、鼻、やっちゃいましょう」
ということになる。
後頭部を少し引いて、鼻腔を垂直に立てる感じに。
そこに、ビニールの手袋をはめた小指をゆっくりといれていく。
左から。頬骨に重さを感じて。眼球にも重さを感じて。
深く入っていく。指の回転に合わせて、頭部の内側のどこかが、少し開いていく感覚がある。
続いて右。
同じように指をいれていくと、明らかに奥の空間が広い。
鼻の奥から後頭部にかけてが広くなった感触がある。
指が抜かれ、その後頭部の広がりを感じていると、腰に動きがうまれる。 最初は、左の骨盤が上に引かれる動き。 骨盤の上辺と背中側の深いところがつながっていて、その間を粘度が高い重い液体がゆっくりと、確信を持って動いていく。 その液状のものに意識を集中していると、喉の奥とつながっているのを感じる。
そして、からだが動きはじめた。
骨盤の後側が、引かれる。微かな動きだけれど、腰の深いところからの動きに反応する。
あとはいつものように、オートマチック。
「目は開いたままでいてください」
徐々に大きくなる動きが、腰から腹、胸と昇ってくる。
いつにもまして腰の動きが激しい。
腰というよりも、腰椎の中心からの動きだ。
腹部がぐるんぐるんかき回されて、脇腹が痛い。
ごはんを食べた直後に全力疾走した時のような痛みだ。
「おなかが、痛いです〜」
と訴える。
訴えるがどうしようもない。
「ターゲットがどこにあるのか分かれば、手伝ってあげられるんですけど……」
と言うと、
「からだにまかせるほかないですね」
とのこたえ。たしかにそうです。
骨盤の前後運動は、徐々に回転運動を加えながら大きくなって、 腹から胸、肩、頸、頭まで、がたがたと音を立てて左右に振られる。 肩は左右交互に、まさにバタバタとベッドに叩きつけられるように動く。 おもわず 「やりたい放題ですね〜」 と声がもれる。 ベッドががたがた揺れる。 あまりの動きの大きさに田畑さんも驚いているのか、 「ベッド、少し下げますね」と下ろしてくれた。
「やはり目は開いていたほうがいいですか?」 「それはどうして?」 「目を開けていると、どうしても天井方向にテンションがかかって、頭の動きを抑えてしまうように思うんです」 「では、自由にしてみてください」
結局は目は開いたままでいた。 目を開いていても、視線に意識が乗らなくなってきたからだ。 何度か肩から頭まで動きが昇って、収束する。 と思ったが、今度は逆に(反時計まわり)に動きはじめる。
ほぼ同じ動きがはじめる。 今度はからだの左半分を、動きが昇ってくる。 と、左の鼻が通った。 通った、というか、鼻の奥に部屋が増えた感じ。 新しく部屋ができた訳ではなく、 がらくたが詰まっていた部屋が、すきっときれいになって風通しが良くなった。 おお!
仙骨が、燃えるように熱い。 摩擦かとも思うが、それだけでもないようだ。 意識を向けると、仙骨が小さなピースに別れて柔らかく動いている感触がある。 音が聞こえそうに、ことこと動いている。
先と同じように肩、頸、頭まで昇って、バタンバタンとやりたい放題。 「首は回ってないけれど、ほとんどエクソシストだな、こりゃ」 と思い、おかしくなる。 今回の動きはそのくらい激しい。 振動が肩まで昇ってくると、まるで洗濯機の脱水槽がバッタンバッタン動いているような雰囲気になる。
最後は、右の肩胛骨を激しく動かして、そしてからだを走らせていたエネルギーは抜けていった。
立てていた膝ががっくりと右に倒れ、もう動かない。 背中一面に汗をかいている。 仙骨はあいかわらず放熱している。
「落ち着いたら、からだを起こして座ってください」 ベッドに腰掛けると、すとん、という感覚。 からだの真ん中に自分が座っているようだ。 右でも左でも、前でも後でもなく、 ちょうど真ん中。 腰から胸にかけての安定感。 鼻腔の奥のひろがり。 いい感じです。
「では、歩いてみてください」 との言葉で立ち上がる。 と、一瞬足が崩れ落ちそうになる。 足腰、全身がくたくたに疲れている。 「わー、立てないくらい疲れてます!」 「そうですね」 でも、歩いてみると、とても快適だ。
以上が、10回のロルフィングセッションのすべてです。 この3ヵ月弱で、自分のからだにどんな変化が訪れたのか。 それを検証していくのはこれから。 でも、からだの乗り心地が明らかに良くなった感触はある。 何よりも、自分のなかにあんなに激しく動く「何か」があることが判っただけでも大きな収穫だ。
帰り際、田畑さんに感想を話す。 「ひとりでいるときに、きっとこんな動きが出てしまうと思うのですが、そういう時はどうすればいいですか?」 そんな会話をした。 セッションが始まる前には、こういう会話を交わすようになるとは思っていなかった。 からだのことをある種客観的に見つめながら、からだのなすがままに任せられるようになった。 それが一番大きい変化かもしれない。