草日誌

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2026年8月31日

ソラノマド|高山なおみ 
夏のからだ

| 夏のからだ |
 
ここ数日、暑さがまた舞い戻ってきました。

それでもこうしてパソコンに向かっていると、
夏の盛りとは違う風が、さやさやと海から渡ります。
仕事椅子をくるっと回し、両腕を上げて伸びをひとつ。
そのまま空を見上げたら、
真っ青な空に入道雲、高いところには鱗雲が広がっていました。

夏と秋が同時にある空。

海も青いなあ。

いつもより潮の量が多く感じるのは、青が濃いからかな。

今日は早めに仕事を切り上げ、
ひさしぶりに南風荘ビールを飲みながら、つまみを並べて映画を見ることにしました。
南風荘ビールは、ビールのグレープフルーツジュース割り。
暑いときには氷を浮かべます。

夜ごはんを兼ねたつまみは、
レーズンパンを焼いて、
いちじくとカマンベールチーズ、
にんじんラペ(ケッパー入り)、
かぼちゃのサラダ、
スイカの白いところの塩もみと、
ちぎったレタスの盛り合わせ。

映画のとちゅうで、ふと、いつもの夕焼けと空の色が違うことに気づきました。

一時停止をして窓辺に立つと、大阪の街が一面、薔薇色に包まれています。
対岸にひとつだけ、強く輝いている小さな四角。
炎のようなその点は、今まさに沈もうとしている太陽が、ビルに反射しているのです。
地面がうっすら濡れているから、知らない間に夕立があったのかもしれない。
どこもかしこも緑が濃く光り、もうちょっとで満月の白い月まで出ています。

太陽が山に沈むまでの、賑やかな夏の夕暮れ。

木立ちにこだまするツクツクボウシの声。

ああ、夏の終わりを歌っている。

映画を見終わると、
こんどは月明かりが海に映っていました。
ときどき、暗くなってもなお晴れ渡り、
空気も夜景も何もかも、こんなふうに綺麗でたまらない夜があります。

網戸に鼻を近づけると、夏の夜の匂いがしました。
植物たちが吐く息のような、湿った地面のような。
子どものころの夏は、こんな匂いがよくしていたっけ。

あのころの私は、
西陽を受けて首を垂れる大きなひまわりも、
黒い種をはじかせるピンクの鳳仙花も、
汗をかいて立ちつくす自分とつながっていたことを思い出しました。

なんだか私は、お腹の底がうずうずし、急いで階段を上りました。
網戸のない寝室の窓から、
夏の匂いをちゃんとかいで確かめたかったのです。

海も空も、夏のからだ。
その大気が広がって、私のからだに伝染したような夜でした。
  
    
 

 
 〈 了 〉
 

 
文・写真 高山なおみ
 
 
ほかの回を読む → こちらから
高山なおみさんの本 → 『毎日のことこと』

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