2012年6月1日
美術家・前川秀樹の部屋に集められた
人の手では作り出せない「世界の断片」を
美しいカードに纏めました。
波打ち際で拾った、つるつるの貝殻のかけらや、秋の山で採った熟れた真っ赤な樹の実、潰れた工場跡の地面で踏みつぶされた窓ガラスの欠片。きらきらと光を反射する黄金虫の片羽。そんな小さなもの達にも厳然と世界は宿る。
世界にまだ、〈果て〉と〈ほの暗い闇〉とが存在していた時代。科学も化学も芸術も神話も未分化だった時代。僕は、そんな〈縁取られる前の世界〉にずっと焦がれている。きっと世界は恐ろしく、そして美しかった。人と世界は対等ではなかった。人は、恐ろしくも美しい世界の欠片を喉元に飾った。Collier 首飾り。それは自らの身体を供物に見立てて彩飾する行為。あるいは世界への身の程知らずの未熟なプロポーズ。
しかしいずれにしろ、モノを美しいと思う心の働きがなければ人が琥珀や黒曜石を手に取ることはなかっただろう。コレクションという行為。生きるためだけに必要な道具は余分には必要ない。にもかかわらず人は余分なモノを集める。眺めて愛でてなでまわして。どうしようもなくその役立たずどもを好きになる。
今、美しく広漠としていた世界は箱庭のように矮小で、薄汚れたものになってしまった。僕は夢想する。失われた世界の果ての修復を。そんな愛すべき役立たずどもをつなぎ合わせながら。
前川秀樹
*
用途の判らない不思議な器物、
骨格標本、鉱物、鈍い輝きを放つ干からびた肉の塊……
得体の知れないものが、
前川さんの家のそこここに無造作に置かれています。
それら作家のイマジネーションの源泉は
いつかその出自を離れ、
世界の断片=オブジェは、呪物から寿物となり
天上から降りそそぐ独特の倍音を伴って
聴いたこともない祝福の旋律を奏でています。
供物。
それは想像力という見えない神殿に捧げられた、
まぎれもないささげもの。
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この【カルト・コリエ】は、
千葉の小さな個人美術館〈museum as it is〉に展示される
これら「世界の断片」を構成し4×5の大判カメラで撮影、
27枚のカードに仕立て、函に収めたコレクションです。
写真は『VOMER』で像刻の撮影を担当した首藤幹夫さん。
函のデザイン、カードの意匠はじめすべてのアートディレクションは、『VOMER』『Zuhre』に続き3回目のチームを組むミスター・ユニバースの関宙明さん。
クリエイティブディレクションは信陽堂。
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このコレクションは、
美術家の想像力の原点をオブジェの構成で示した、
絵画でも像刻でもない、
もうひとつの作品世界です。
モノとモノが響きあい、新しい磁場を形成していくさまを、ぜひ体験してください。
*上の写真は函とカードのイメージです。
*制作は限定300部のみ。
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