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眠る前、ある声を思い出した。 2014年の番組の撮影を終えた日に自分の奥深くに刻まれたその声の意味を、この夜ほど理解できたことはなかった。 あの日、僕はいわきのホテルで極度の疲労と達成感に満たされながら、取材…
青空の広がる沿岸部を車で走り抜ける。 道は広く真新しい。以前は工事中でところどころアスファルトが割れていた河口の橋の上を通り、底上げされた道の上に車を止める。津波で川が氾濫した痕跡は、水面から5、6メートル垂…
もうどんな映像も見たくない。 真っ昼間から寝室に横たわって天井を見上げる。 いつもならなにかしら惹きつけられる人やテーマが浮かんで間断なく制作がはじまるのだが、ずっとなにも見当たらない。心の中を空き地にし…
4日目。ちばさんから家の鍵を受け取って、午前中から撮影をはじめた。ようやく家と二人きりだ。二人きりという言葉は物や場所に対して使わないのかもしれないが、これまでこの「怪我人」である家にカメラを向けていいの…
2日目。できる限り何にも触れずに物を動かさないよう注意しながら、津波で亡くなったちばさんのおばあちゃんの部屋に入った。両開きの戸が開いたままのクローゼットにかけてあるジャケットの青が鮮やかで、まるで昨日掛…
そのメールが送られてきたとき、なにを求められているのかわからずに繰り返し読んだ。 石巻の海からすぐ近くに一軒のお家があって、2階建のうち1階が波を被った状態で建っています。家主のちばふみ枝さんは「この家を…