草日誌

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記事一覧

松井至|人に潜る

人に潜る 第8話
田んぼに還る|西会津 ④

2024年08月17日

【 生きている者たち 】 撮影をはじめた日は、お盆の墓参りだった。 炎天下の朝に老人がひとり国道を歩いてきて小径に入る。挨拶をして話を聞く。彼が自分の家の墓に手を合わせてから線香をあげ、それからいくつもの墓石の前に次々と…

人に潜る 第8話
田んぼに還る|西会津 ③

2024年08月03日

【 映像の地産地消 】 あいかわらず葛藤してますね。 事の顛末を話すと佐藤恒平(39)はそう言って笑った。 区長は最近、移住者もいなくなってたまたま負けが込んでいただけですよ。至さんが全然仕事うまくいってなくて、もっと落…

人に潜る 第8話
田んぼに還る|西会津 ②

2024年07月20日

【 集落のヒト 】 2022年のある日、レンタカーの中で途方に暮れていた。 「もうこれ以上は撮れない」そう思って現場を離れたのだが、運転して東京に帰る気力がなかった。撮影は頓挫した。 フロントドアを開けて、最上川の匂いと…

人に潜る 第8話
田んぼに還る|西会津 ①

2024年07月06日

【 焚き火の上の動く画 】 ある夜を境に映像が流布する以前の世界を想像するようになった。 2017年、ウガンダ北部をジープで走っていた。 郊外の集落まで、少年兵だった青年に会いに通う。長く続いた内戦で地獄を通過した子ども…

人に潜る 第7話
「いのちの被膜」をめぐる対話
〈後編〉

2024年07月05日

2023年夏、京都の誉こん田だ屋や源げん兵衛べえにて。 短編ドキュメンタリー『いのちの被膜』は山やま口ぐち源げん兵衛べえさんからの依頼を受けて松井至が制作した作品である。そこで語られた衣ころもをめぐる思考を深めるため、思…

人に潜る 第7話
「いのちの被膜」をめぐる対話
〈中編〉

2024年05月18日

2023年夏、京都の誉こん田だ屋や源げん兵衛べえにて。 短編ドキュメンタリー『いのちの被膜』は山やま口ぐち源げん兵衛べえさんからの依頼を受けて松井至が制作した作品である。そこで語られた衣ころもをめぐる思考を深めるため、思…

人に潜る 第7話
「いのちの被膜」をめぐる対話
〈前編〉 

2024年05月04日

2023年夏、京都の誉こん田だ屋や源げん兵衛べえにて。 短編ドキュメンタリー『いのちの被膜』は山やま口ぐち源げん兵衛べえさんからの依頼を受けて松井至が制作した作品である。そこで語られた衣ころもをめぐる思考を深めるため、思…

人に潜る 第6話
握手

2023年12月02日

十代の終わり頃だった。 ひとり暮らしのアパートで宅急便の再配達を頼もうとダイヤルを押した携帯から宅配員の声が聞こえたとき、自分の名前をすっかり忘れていることに気がついた。 お名前は? そう二度三度くりかえすこととなった宅…

人に潜る 第5話
いのちの被膜|京都 ③+映像

2023年09月16日

      どこにでもある⽇常のありふれた場⾯に、長く悩まされてきた問いが溶解した⽇のことを思い出す。 娘のスイミングスクールに付き添ったときだった。 ⾒ていてね そう⾔われて蒸し暑い観覧席からプールサイドを⾒おろすと、…