草日誌

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2014年9月7日

沖島の夢

深夜からの取材だったので、昨夜はいつになく早く床につきました。
なかなか寝付けず、夢うつつのような時間の中で、夢を見ました。
島の細い道を歩いています。
沖島は小さな島で、車が一台もありません。
ですので、道はすべてやっと人がすれ違えるほどの細道です。
その道を歩いていると、横道から女性がすっと出てきました。
そして、
「島のこと取材してくれているのですってね。ありがとうございます」
と、ぺこりと頭を下げらました。
その身のこなしと話しぶりがとても静かで、水の上を滑るような印象でした。
とっさのことで、うまく受け答えできずに、
「ああ、はい。よろしくお願いします」
とだけやっと答えているうちに、その女性はまた別の細道に入ってしまい、もう姿は見えない。
「島のこと」という言葉で、なにかがわかった気がしました。
その言葉にこめた温度が、まるで親しい人のことを話しているようなのです。
ここの人たちは、島のことを家族のように、親のように、自分自身のことのように思っている。
その連帯感。
紐帯、という言葉を思い出しました。
島の人はみな、おなじ紐帯で島と結ばれている。
そして、すーっと眠りにつきました。
夢の中でもずっと、紐帯、という言葉がこだましていました。
目がさめて真っ暗な湖にこぎ出してからも、ずっとその言葉が離れません。
……もしかすると、あの女性は沖島自身だったのかもしれない。
もしくは、琵琶湖?
沖島ご自身だったとしたら、
宗像三女神のおひとり、多紀理毘売命(たぎりびめのみこと)だったろう。
そう思いついた時に、夢の中で感じたなめらかな印象も納得できたような気がしました。
昨日、島に着いたとたんに強烈な西風が吹いて、艀に立つと飛ばされそうな程でした。
大粒の雨が降りはじめ、雷が幾柱も湖面に落ちています。
思わず「今夜、湖に漁に出る予定です。どうぞ受け入れてください」と祈っていました。
深夜に表に出ると、風は収まり雨も止んでいました。
漁場を転々とするあいだも、波はほとんどなく、揺れを感じることもありません。
無事に漁を終え、堀切の港に向かう途中には、湖はこんなに穏やかな表情になっていました。
受け入れていただけたのでしょうか。
おかげさまですばらしい取材になりました。
ありがとうございます。
またお邪魔させていただきます。

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